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Interview

【株式会社スタジオエイトカラーズ】高知県のアニメ産業を牽引する注目企業、拠点選びの決め手とは

2023.02.01

インタビュー

取材先:株式会社スタジオエイトカラーズ 宇田英男さん

高知市中心に位置するはりまや橋商店街。
老舗の和菓子屋や古くから愛される食堂に加え、おしゃれな飲食店も続々とオープンする、観光客や地元の方にも人気のスポットです。
この近くにオフィスを構える、高知では珍しいアニメ制作会社、株式会社スタジオエイトカラーズの代表取締役である宇田英男さんにお話を伺いました。

会社概要と高知オフィスの役割について教えてください。

高知県初となる手描きアニメの制作会社として、運営を行なっています。
創業は2021年7月15日で、日本のアニメ制作会社が東京に集中している中、高知で初めての手描きのアニメ制作スタジオだと認識しています。

──具体的な制作物などはどういったものがありますか?

当初は、東京で制作しているアニメの修正作業が主でしたが、今は地元の金融機関様のCM制作などを手がけています。
紙と鉛筆で作業するアニメ制作会社が多い中、スタジオエイトカラーズでは東京とのやり取りに紙を使うのが難しいので、社内は完全にデジタルで制作をしています。

株式会社スタジオエイトカラーズ制作 アニメキャラクター

地方に進出しようとした経緯と、中でも高知進出の決め手となった理由を教えてください。

アニメ業界は企業の9割が東京に集中している中で、まだ地方でのアニメ制作の実例は多くありません。その中で、高知進出を決めたポイントは2点あります。
ひとつ目は、漫画文化があり絵を描きたいと思っている方が多いと感じたからです。漫画制作はアニメと共通している部分もあるので、高知県においても絵を描きたいというクリエイターの採用の可能性があると直感しました。実際に、155名もの方に会社説明会に来てもらい、その中で入社してもらいたいと思える人も多かったので、高知にクリエイティブ人材が多いと今は確信しています。
ふたつ目は、設立するなら地元に根付いた会社であるべきだと考えていたからです。地方で会社を設立する場合、産官学との連携は必須であると考えていて、特に入口としての行政のバックアップは最も重視していました。そんな中、高知は県の職員の方だけでなく地元企業の方が積極的にコミュニケーションを取ってくださったので、高知県であれば地元一体となったサポートを受けられると実感したので創業を決めました。

──社名の由来になった「ヤイロチョウ」に込めた思いをお聞かせ下さい

高知の県鳥「ヤイロチョウ」を社名にした理由は、創業時から高知に根付いたものを会社のイメージにしていきたいという思いを込めています。ただ、地元の方に聞きましたが、「ヤイロチョウ」はあまり街中では見ないようですね(笑)
地元金融機関様のCMでは街中に普通にあるモニュメントから飛び出すような工夫をしました。ヤイロチョウが街のみんなを笑顔に変えていく、という表現はアニメで多くの人々を笑顔にしていきたいという弊社の想いに重ねています。

株式会社スタジオエイトカラーズ

進出前、若しくは進出後に苦労した事とそれをどう解決しましたか?

県外への進出の苦労は「情報が少ない」という事かと思います。場所や価格帯など拠点立ち上げに必要な情報を得る難しさが地方にはあると感じていました。ですが、高知県は行政や地元企業との距離感も近く、コミュニケーションが取りやすい環境がありました。そうした地域のネットワークに入ることで地元の情報などを知ることができました。
創業時は、コロナ禍でちょうど自粛の時期だったので、コミュニケーションは通常に比べると少なかった方だと思いますが、今後はコミュニケーションがより活発になり、さらにサポートが受けやすくなるのではないかと期待しています!

株式会社スタジオエイトカラーズ 宇田英男さん

「人材確保」「人材育成」について、それぞれ現状課題に感じていることや、工夫していることなどを教えてください。

人材確保の課題は一般論でいえばアニメ会社は「人が集まらない」という事かと思います。ここについては結果的に、高知にアニメ会社が設立されるという珍しさもあり、また高知のテレビで取り上げていただくなどしてもらったおかげで、採用説明会では155名の方に参加して頂くことができました。説明会に参加してくださった方のお話を聞くと、友達のSNSから知ったという方も多くいらっしゃいました。
その他で、実際に大変だったのは教育面でした。もともと高知ではアニメ制作ができる会社が無い中、社内でも未経験の方が多かったので、東京のスタッフに高知へ来てもらい研修をしました。教育はオンラインでできることもありますが、実際に会って教育をする方が効果は高いと感じているので、今でも月1回東京からアニメーターが高知に来ています。弊社が行っている子ども向けのアニメ教室でもそうですが、実際に会いながら教える方が、効果が高いのでこれは子供も大人も共通の感覚だと感じています。
また高知県の支援で教育プログラムなどの取り組みを積極的に行ってくれるので、今後は弊社も一緒になってオフラインの教育環境を拡充していければと思っています。

──子ども向けのアニメ教室はどういった思いで取り組まれているのですか?

アニメ教室は高知県や地元の金融機関と一緒に取り組んでいるのですが、小学生〜高校生にとって、漫画やアニメを作りたいと考えるきっかけになればと思って活動しています。絵が上手いと思う人は、大体子どものころから絵に触れていたり、絵を書くことが好きな人が多いと感じているので、小学生からでも参加できるアニメ教室をこれからも実施していきたいと考えています。
そういう考えもあり、今後アニメ制作を志す人が増えるように県や市をあげて取り組んでいただいているのは、高知県のアニメ制作会社を運営していく身として、ありがたいと思っています。

株式会社スタジオエイトカラーズ オフィス

高知オフィスについて、お勧めのポイントを教えてください。

「はりまや町」という高知県内でも比較的便利な場所でアニメ制作をさせて頂いています。本当に想像以上に便利さを感じています。また、若いスタッフが多く、都心部と比べて実家暮らしの社員も多いので、生活環境がしっかり整っている方が多い印象でした。
ただ東京と比べて高知は暑いと思います。東京にいると地下を移動する事も多いので、真夏の高知は初心者には大変なところもありました(笑)また、県内は交通インフラが不便なところも多く、車での移動がベースとなるため、オフィスを考えるときは必ず駐車場があったほうがいいですね。

株式会社スタジオエイトカラーズ オフィス

今後の高知オフィスの展望についてお聞かせ下さい。

スタジオの目標は大きく2点です。
ひとつ目は、人員の採用と教育体制の強化。ふたつ目は、オリジナル作品の制作です。現在、高知県ではアニメの産業化に向けた取り組みを進めていて、弊社はその先駆けの企業として事業活動をしていければと考えています。産業化において、まず基盤となるのは雇用の確保と考えているので、積極的な採用活動と社内での教育体制の強化を進めています。
また、当然ながら収益性を確保していかないといけないため、そのための仕事の受注もあわせて行なっていますが、スタジオブランディングの観点で言うと、今後は社内のオリジナル作品の制作も目指していければと考えています。
「自分達の作品」がある事は社内のクリエイターにとってのモチベーションの向上にもつながると考えています。

──どういったオリジナル作品を作りたいと思われていますか?

高知には伝統的な文化やそれに紐づくユニークなエピソードも多くあるので、そういった高知の独自の文化にインスピレーションを受けたアニメを制作したいと思っています。

株式会社スタジオエイトカラーズ 宇田英男さん

進出を検討されている企業に向けてメッセージをお願いします。

高知県は元々漫画文化が盛んな地域という事もあり、若い人を中心に漫画やアニメに関心がある人材も少なくないと考えています。ただ、残念ながら、これまで高知県ではクリエイティブな仕事をする場所が少なく、働く場所が限られていました。弊社の進出をきっかけに高知には、アニメや漫画の仕事をやりたいという熱量を持ったクリエイターが少なくないということが顕在化されたと感じています。
また、高知県の方はコミュニケーションの部分で温かい人が多く、高知県の偉人、坂本龍馬に代表されるようなイノベーティブな方も多い印象があります。今後の日本を支えていく産業の1つと言われるコンテンツ産業の次世代の担い手が高知には多くいると思いますので、コンテンツ業界での地方拠点や創業を考える場合、高知も選択肢の1つとなるかと思います。

<企業情報>
株式会社スタジオエイトカラーズ

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